それでもキミと、愛にならない恋をしたい

「菜々のお母さんや希美が天国から見守ってくれてるなら、俺たちはちゃんと幸せに生きていくべきだろ?」
「そうです。でも、幸せに生きるのに新しい恋は必要ですか? 想い合っていた人を裏切ってまで――――」
「それは『裏切り』なのか?」

 ヒートアップする私を遮るように、楓先輩が言葉を被せる。

「菜々がお母さんを大切に思ってるからこそ、再婚を複雑に感じるのはわかるよ。反対だと言い出せなかったのも、ショックが大きすぎたからだってわかってる。でも、俺はお父さんが裏切ったとは思わない」

 冷静な声で、私を諭すように先輩は続けた。

「菜々のお母さんは、お父さんの幸せを裏切りだって思うような人なのか?」

 一番聞きたくなかった言葉に、カッと頭に血が上った。

「お母さんがどう思うかなんて、先輩にはわからないじゃないですか……!」

 ここが静かな朝の公園だということも忘れて、大声で叫んだ。

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