それでもキミと、愛にならない恋をしたい

 驚きつつ真新しい美容室を左に曲がると、四階建ての茶色いマンションが見えた。

 今年の三月まで住んでいた二階の角部屋を見上げると、窓にはレースのカーテンがかかっていて、すでに別の家族が住んでいるのだとわかる。

 まだこの街を離れて一年も経っていないのに、色々なことが変わっていた。綺麗になった駅、コンビニから美容院になった角のお店、マンションの住人。時の流れを実感して、なぜか少し寂しくなった。

 楓先輩から逃げて、ちょうど駅に来た電車に飛び乗ったけれど、特に目的があってここにきたわけじゃない。

 私はぶらぶらと歩きながら、小学生の頃によく遊んだ公園へ足を向けた。遊具はすべり台とブランコとジャングルジムのみ。あとはただ開放感抜群の広場があるだけで、鬼ごっこをしたり、バドミントンをしたりできる、とにかく広い敷地の公園だ。

 その奥には川が流れていて、公園の脇から階段を上ると土手がある。目の前に川と空だけが広がる景色が好きで、小さい頃はここでお母さんと一緒に散歩したりシャボン玉をしたりして遊んだ記憶がある。

「懐かしい……」

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