それでもキミと、愛にならない恋をしたい

 それなのに、お父さんがいつものテンションで話すから拍子抜けしてしまう。

「ここ、よく亜紀ちゃんと来てたね。菜々が初めて靴を履いて歩いたのも、この場所だ。自転車の練習も、なわとびの練習もここだった」

 私の脳裏に、家族の思い出が色鮮やかに蘇ってくる。日曜日はよく三人でここに来ていた。桜の季節にはお弁当を持ってきてお花見をしたこともある。

 お父さんの横顔を盗み見ると、目の前にお母さんと小さな私が遊んでいるかのように微笑んでいる。今、同じような景色を思い出しているのかもしれない。

「懐かしいね。菜々が大きくなってからは、僕がここに来ることはなかったから」

 ゆっくりと頷くと、お父さんがふと真顔になって私の方に向き直った。

「ごめんね、たくさん悩ませて。お父さんのエゴや希望を押し通した結果、菜々は家にいたくないほど思い詰めていたんだね」

 真剣な声音になったお父さんにつられて、私も姿勢を正してお父さんに向かい合った。

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