それでもキミと、愛にならない恋をしたい
「僕は亜紀ちゃんを愛していたし、今でも大切に思ってる。だけど、彼女はもうこの世にはいない。それは紛れもない事実だ」
「そんなの……そんなのわかってる! だからって……」
「亜紀ちゃんが亡くなって、僕の支えは菜々だった。ひとりでも菜々を立派に育てなきゃと必死だった。気付けば家のことはほとんど菜々がしてくれて、逆に僕が支えられていた。本当に自慢の娘だよ」
「……」
「中学の制服を着た菜々を見て思ったんだ。いずれ菜々は進学や就職や結婚で、僕の元から巣立っていくだろう。亜紀ちゃんも菜々もいない。そうなった時、この先の人生をひとりで生きていくのは……寂しいと思った。そんな時、真央と出会ったんだ」
悲しくて苦しいほどの真実を突きつけられ、私はそれ以上言葉が出なかった。
お父さんは今もお母さんを大切に思っているけれど、もうお母さんはこの世にいない。だから、今を一緒に生きていける真央さんを選んだ。
私はお母さんの気持ちを代弁しているつもりで『裏切り』だなんて言ってしまったけれど、再婚を認めないということは、これまで必死に私を育ててくれたお父さんに『これから先の人生を孤独に生きろ』と宣告しているようなものなんだ。
それに気付かされ、私は急に恥ずかしくなった。