それでもキミと、愛にならない恋をしたい
宛名には切手や住所の記載はなく、ただ【菜々へ】と見覚えのある文字で書かれている。
「これ……、もしかして……っ」
「うん。亜紀ちゃんから菜々への手紙」
え……?
どうして? そんな手紙があるなんて、この七年間、一度も聞いたことがなかった。
「お父さんは、なにが書いてあるか知ってるの?」
「いや。読んでないよ。でも僕にも手紙を遺してくれていたから、正直想像がつく部分はあるんだ」
「どうして、今まで渡してくれなかったの?」
「実は、この手紙は菜々が初めて恋を知った時に渡してほしいって、亜紀ちゃんから頼まれていたんだ」
「私が……初めて、恋を知った時……?」
驚いてお父さんを見つめていると、不貞腐れた態度で立ち上がった。
「……家に来た佐々木楓くんは、彼氏なんじゃないの? まだ十六歳だし彼氏なんて早いと僕は思うけど、あんまり口を出すと娘に嫌われるって真央が脅すから……」