それでもキミと、愛にならない恋をしたい

 川辺を見つめるお父さんの背中がどことなくしょんぼりしているように見えて、私は少しだけ笑ってしまった。

「今、読んでもいい?」
「もちろん」

 真っ白な封筒を開け、中に入っている便箋を取り出す。そこには、お母さんの本当の声が詰まっていた。


『菜々へ

 元気にしていますか?

 何歳になってるのかな? 小学校高学年? それとも中学生? もう高校生になってるのかな?

 きっと洋ちゃんは家事が壊滅的にダメだから、菜々には迷惑をかけてるよね。ごめんね、もっと洋ちゃんに家事を仕込んでおくべきでした。

 病気が見つかって、菜々にはたくさん悲しい思いをさせたよね。まだ小学生三年生の菜々にとって、お母さんが病気で入院してるだけでもショックだったもんね。

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