それでもキミと、愛にならない恋をしたい
未練がひとつもない人生なんて難しいけど、できるだけ後悔しない道を選んで生きてほしい。
菜々が幸せに笑っていられること。それがお母さんの一番の願いです。
ずっと天国から見守ってる。そばにいてあげられない分、誰よりも菜々の幸せを祈ってるから。
菜々、大好きだよ。
お母さんより』
四枚の便箋に、懐かしい丸っこい文字で綴られたお母さんの想い。
涙が邪魔をして読めなくなるたびにぎゅっとまばたきをして、目を擦って、何度も中断しながら最後まで読んだ。
ベンチに座り、嗚咽しながら手紙を読む私の向かいで、お父さんは背中を向けて空を仰いでいる。その肩が少し震えているのは、見ないフリをした。