それでもキミと、愛にならない恋をしたい
お父さんに遺した手紙にも、きっと再婚について書いたんだろう。もしかしたら、その手紙に背中を押されたのかもしれない。
お父さんと私への大きくて深い愛情がずっしりと詰まった手紙の最後の一枚は、文字が滲んでいて読みにくかった。
私たちの前や手紙の中で気丈に振る舞っていても、自分の命が尽きかけているのを知って、怖くないはずがない。未練がないはずがない。
「お母さん……っ」
握りしめた手紙が、くしゃ、と音を立てる。
病気になって一番辛かったはずのお母さんが、私やお父さんの将来を心配して、こうやって手紙を遺してくれていたなんて……。
私はベンチから立ち上がって、目元を乱暴に拭った。こんな風に泣くなんて、きっとお母さんは望んでいない。
「お母さん、手紙ありがとう。お母さんの最後のワガママ、ちゃんと受け取ったよ」