それでもキミと、愛にならない恋をしたい
第十章
【今朝は逃げ出してごめんなさい。あのあと家に来てくれたとお父さんから聞きました。もしも先輩が許してくれるなら、もう一度会って話がしたいです】
私は自分の部屋でイルカのぬいぐるみを抱えながら、もう一時間以上スマホとにらめっこしている。
あのあと、お父さんと家に帰ってくると、真央さんがいつも通りの笑顔で待っていた。
彼女がお母さんの手紙について知っているかどうかはわからない。けれど、私とお父さんがなにを話してきたのか詮索することなく、ただ温かく「おかえりなさい」と迎えてくれた。
それがどれだけ凄いことなのか、今の私にはよくわかる。
だから照れくさかったけど、笑顔で「ただいま」と返すと、真央さんが泣き出してしまって驚いた。
「ごめんね、なんか嬉しくて……気にしないで」
慌てて涙を拭ってキッチンへ向かった真央さんを見て、これまでの態度を改めて反省した。
私が自分勝手に逃げてきたことで、相手をたくさん傷つけている。京ちゃんに本音を言えなかった時も、お父さんに積もり積もった感情を爆発させた時もそう。