それでもキミと、愛にならない恋をしたい
そして、楓先輩に対しても同じだ。
初めて先輩に出会った日から、私はずっと彼から逃げっぱなしだ。
事故から助けてもらった時は、泣きじゃくった恥ずかしさからお礼も言わずに逃げ出した。
昨日の保健室でも、今朝の公園でも、先輩は私に触れればなにを考えているのかわかるはずなのに、それをしないで私に「きちんと話そう」と言ってくれた。
なのに、私はそれを突っぱねて、自分の主張だけを押し通して逃げてばかり。
原口希美さんの存在を知り、自分たちを両親や真央さんに重ねていっぱいいっぱいになっていたけれど、ようやく両親については気持ちの整理ができた。
真央さんは大きな覚悟をもってお父さんといる道を選び、お父さんはお母さんを大切に思ったまま、これから先の人生を真央さんと歩もうと決めた。それをお母さんは祝福しているのだと知って、私の心は少しだけ軽くなった。
そして私は……楓先輩ともう一度話をしたいと思った。