それでもキミと、愛にならない恋をしたい

 隣から楓先輩が心配そうに顔を覗き込んでくる。私は慌てて首を振った。

「違うんです。昔、休みのたびに家族で色んなところに出かけてたんですけど、両親と行った最後の場所がここで……」

 お母さんの病気が見つかる直前だった。このあとに訪れる悲劇を知らない私たちは、可愛らしい海の動物に大はしゃぎして楽しんだ。私の部屋にある三人の写真は、ここの一番奥にある大きな水槽の前で撮ったものだ。

 感傷的な気分になりそうな私を察して、楓先輩は頭をぽんぽんと撫でてくれる。

 その温かい優しさが嬉しくて、私は大丈夫だと頷いてから、京ちゃんたちが向かった先に視線を投げた。

「京ちゃん、お父さんに認めてもらえるといいなぁ」
「そうだな」
「そういえば、二年生も三者面談はあったんですか?」
「ああ。うちも父親が来たよ」

 楓先輩が普通に話すから流しそうになってしまったけど、ご両親との仲はあまりいいとはいえなかったはずだ。

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