それでもキミと、愛にならない恋をしたい

だからって私を置いていくことはないんじゃないかな!

「……なんだ、あの子の方か」
「えっ?」

京ちゃんの背中を見送っていると、後ろから笑い混じりの声がした。

「いや、なんでもない。パワフルだな」

振り返ると、先輩は先程とは打って変わって小さく微笑んでいる。

なんだかホッとしているように見える柔らかな表情に、私の目は釘付けになった。

「もしかしてあの子、美化委員?」
「あっ、はい。そうです。橘京香ちゃん」
「日野が言ってた。同じ委員会の一年の子に可愛い子がいるって」
「え! それって京ちゃんのことですか?」

思いがけない情報をゲットして、つい身を乗り出すように聞いた。

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