それでもキミと、愛にならない恋をしたい
もう九月が終わろうとしている。クラスには夏休み前に告白して彼氏や彼女ができたとはしゃぐ子の姿もあったというのに、ふたりは互いに想いを秘めたまま進展する気配はない。
しかも、京ちゃんにとってこれが初恋。きっと彼女から積極的にアプローチするのは難しいと思う。
「……なにか私にできること、ないかなぁ」
京ちゃんは話を聞いてくれるだけでありがたいなんて言ってくれるけど、恋愛経験のない私ではアドバイスなんてできないし、本当にただ聞いているだけ。人形相手にしゃべっているのと変わらない。
もっと実のある応援をしたいけれど、なにをしたらいいのかも皆目検討がつかない。
「友達思いなんだな」
ぽつりと零した私の呟きを聞いた佐々木先輩が、しげしげとこちらを見つめてくる。
あまり見られると、勝手に顔が赤くなってしまうからやめてほしい。その願いを口には出せないけど。
「そう……ですか?」
「そうだろ。日野の参加種目を聞きに、ここまで一緒に来たんだし。あ、名前」
「え?」
「橘さんの名前は聞いたけど、君の名前聞いてなかった」