それでもキミと、愛にならない恋をしたい
今日たまたま偶然会っただけで、きっともう話すこともないだろうし、まさか名前を聞かれるとは思わなかった。私は動揺と照れくささが入り混じった気持ちで自己紹介をした。
「実は、先輩と名字一緒で……佐々木菜々です」
「俺の名前、知ってたの」
「うちの学校で、佐々木先輩と日野先輩を知らない女子はいない気がします」
「日野はともかく、俺は違うだろ」
肩を竦める仕草すらカッコいいのに、違うわけがない。これも、もちろん口には出せないので心の中にとどめておく。
「……テスト勉強とか、どう?」
「え?」
「テスト期間中は部活もないし、一緒に勉強するとか。日野とさっきの橘さん、俺と菜々の四人で」
いいですね!と返事しかけて、ふと気付く。
今……菜々って呼んだ?
女の子の友達に呼ばれることはあっても、男子に下の名前で呼び捨てされるなんて、小学生の頃以来だ。
じわじわと頬が熱くなっていくのを自覚しながら佐々木先輩を見つめると、「なに、だめ?」と問いかけられた。