それでもキミと、愛にならない恋をしたい
彼女はとても料理上手で、なにを食べても美味しい。夕食はもちろん、毎日の朝食もお弁当も嫌な顔ひとつしないで手作りしてくれる。
血の繋がらない連れ子の私を疎んだりしないし、それどころかいつもにこにこ笑って接してくれる。
わかってる。悪い人じゃない。むしろとってもいい人だと思う。
四十歳のお父さんより八つ年下の三十二歳と聞いているけれど、二十代と言われてもわからないほど若く、服装もとてもおしゃれ。
いつも私より先に起きていて、朝からメイクもバッチリだし、髪もスタイリングされている。だらけた姿なんて見たことがない。
きっと今の関係じゃなければ、理想の大人の女性として憧れを抱くほど、見た目も中身も素敵な人だと、心のどこかではちゃんと理解している。
だけど、私は彼女を〝お母さん〟とは呼べないし、呼びたくない。いまだにお父さんとの再婚を素直に祝福できないままだ。
幸せそうに『結婚を前提にお付き合いをしてるんだ』と彼女を紹介された時も、反対だと声を出せなかっただけで、賛成とは言わなかった。