それでもキミと、愛にならない恋をしたい
引っ越してまだ半年しか経っていないこの家は、新築だけど他人の家の匂いがする。私の身体に馴染んでいない証拠だ。
唯一自分の部屋だけは、これまで使っていたベッドや学習机を持ってきたおかげでリラックスできる空間だった。
ベッドのカバーは生成りだけど、カーテンとラグは色を合わせて薄いピンク色を選んだから、シンプルだけど女の子らしくて可愛い部屋だと思う。
ベッドにはお気に入りの漫画と、小学生の頃に買ってもらったイルカのぬいぐるみが転がっているくらいで、基本的にすっきり片付いている。
必死に覚えたおかげで家事は一通りできる。この部屋に誰も入ってほしくなくて、常に綺麗に保つようにしていた。
バッグを置いてクローゼットを開き、手早く制服を脱ぐ。プリーツスカートとリボンをハンガーにかけて、ベッドに置いてあったままのルームウェアに袖を通す。
先月、夏休み中も遊ぼうと言ってくれた京ちゃんと渋谷まで買い物に行った時、お揃いで買ったお気に入りのワンピース。
レーヨン素材だから肌触りがよくて、フレア袖に胸下で切り替えがついているAラインのワンピースは部屋着とは思えないほど可愛い。