それでもキミと、愛にならない恋をしたい

からかうような声音に、思わず顔を上げた。

それは、私が必死に京ちゃんをアピールしようと、昼間に私が言ったセリフ。

口の端を上げて笑った楓先輩に背中を押された気がして、私は大きく頷いた。


翌日。登校して真っ先に京ちゃんに謝りたいと探していると、彼女の方から「ごめん!」と頭を下げられた。

「菜々は私のために色々協力しようとしてくれたのに、あんな態度悪い感じで電話切るなんて最低だった。ほんとにごめん」

てっきり私が誤魔化すような噓をついたのを怒っていると思っていたのに、まさか先に謝られてしまうなんて。

「ううん。私の方こそごめんね。京ちゃんは私を信頼して色々話してくれたのに、私は上手に話せなくて」
「菜々は謝ることないよ。友達だからって、なんでも話さなきゃいけないなんてことないもん」
「うん。自分でもまだ整理がついてなくて、誰にも言えないことがあって。京ちゃんを信頼してないとかじゃなくて、ただ、どうしても言葉にできなくて……」

まだ父親の再婚についての葛藤を言葉にして伝えられる自信がないし、誰かに話す気になれないのが正直な気持ちだ。

考えるだけで苦しくなって、息がうまく吸えなくなる。そんな情けない自分を晒け出すのも恥ずかしい。

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