それでもキミと、愛にならない恋をしたい
友人に対する信頼の厚さも、初対面の後輩に対する優しさも、名前を呼ぶ低くて甘い声も、決めたらすぐ動く行動力も、悩みを真剣に聞いてくれる真剣な眼差しも、全部が私の心臓を潰しにかかってくる。
言うことやることすべてがカッコよく見える。これはもう、見て見ぬフリなんてできなかった。
好き。振り向いてもらえる可能性が宝くじの当選よりも低くても、好き。
私がぽつりと零した本音を、京ちゃんは目を瞠って聞いている。
「本当は、たぶん初めて見たときからずっと好きだったの。でも、私なんかが楓先輩を好きなんて言えなくて……」
「ねぇ。昨日も思ったんだけど、〝私なんか〟ってなに?」
「え?」
京ちゃんはネコのようなくりっとした目で私をじろりと睨む。
「菜々は私の大切な友達なの。高校で初めてできた親友なの。〝なんか〟呼ばわりするなんて、菜々本人でも許せない。菜々を貶めるのは、菜々を大好きだって思ってる私のことも貶めてるのと一緒だよ」
「京ちゃん……」
「菜々は変に目立つ私を特別扱いせずに接してくれた初めての友達だよ。優しくて可愛くて、私の自慢の親友なんだから。って、もー! 朝っぱらからこんな恥ずかしいこと言わせないでよ―!」