それでもキミと、愛にならない恋をしたい

「どうする? 先に行って席取っておくべきかな?」
「あんまり人はいないし大丈夫だとは思うけど、ここで待ってる必要もないしね。先に図書室行ってようか」
「あ、ちょっと待って! 髪変じゃない? リップ塗り直していこうかな」
「ふふ。いつも通り京ちゃんは抜群に美人だよ。気になるならトイレに寄っていこ」
「あ、じゃあ菜々の髪も私にやらせてくれる? 佐々木先輩が見惚れちゃうくらい可愛くしてあげる」
「えっ、いいの? やったー」

 先週、京ちゃんと仲直りしてすぐに楓先輩に連絡をした。

 話を聞いてもらったおかげできちんと伝えられたこと、それについてのお礼、そしてテスト週間初日の放課後から一緒に勉強したいと書き連ねたら、なかなかの長文になってしまった。

 それに対しての返事が【了解】だけだったのに少しだけ落ち込んだのもつかの間、続けて【よかったな】と追加の吹き出しがポコンと現れた。

 文字だけ見るとそっけないように感じるけど、楓先輩の優しさを知った今は、たった五文字のひらがなに温かいぬくもりを感じられる。

 今日がテスト週間の初日で、私たち一年生は六時間目までだけど、二年生は火曜日と水曜日は七時間目まであるらしい。

 今朝、楓先輩から【四時半に図書室で】とラインが届いてからというもの、私も京ちゃんもずっとそわそわしっぱなしだった。

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