それでもキミと、愛にならない恋をしたい

『テストを頑張ったら』と言っていたから、きっと打ち上げみたいな意味だと思うけど、それならふたりよりも四人の方が自然な流れな気がする。

 だから、どうしてふたりで?と考え出すと、つい自惚れた思考が頭をもたげてくる。

 もしかしたら、楓先輩も私と同じ気持ちだったり……?

 いや、まさか。入学前に事故から間一髪で助けてくれたり、そのあと泣き崩れた私に優しく寄り添ってくれたりする優しさを知ってるから、私には彼を好きになる理由はある。

 でも楓先輩にとって、私はたった二週間前に初めて話しただけの後輩にすぎない。

 京ちゃんと話して以来、あまり自分を卑下しないようにしようとは思うけど、それでもこんな短期間で好きになってもらえる理由なんて浮かばなかった。

「あーもう、考えてもわかるはずないか」

 人の本当の気持ちなんて、いくら考えてもわかるはずがない。

 それよりも勉強を教えてもらって、おまけにテストの点も上がったんだから、きちんとお礼をしないと。

 私は再びスマホに文字を入力する。

【九時半、了解です。晴れるといいですね!】

 直接楽しみだと言わなくても、きっと気持ちは伝わるはず。

 ドキドキしながらメッセージを送ると、すぐに既読がついた。

【うん。楽しみにしてる】

 絵文字もスタンプも使わない真っ直ぐな楓先輩本人の言葉が脳内で再生され、私はスマホを持ったまま、耳まで赤く染まっているであろう顔をベッドに埋めたのだった。



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