財閥御曹司の独占的な深愛は 〜彼氏に捨てられて貯金をとられて借金まで押し付けられた夜、婚約者に逃げられて未練がましい財閥御曹司と一晩を過ごしたら結婚を申し込まれました〜

「私はすぐに住みたいの！」
「防犯の問題があるだろう！」
「だったらすでに建ってるアパートを丸ごと買ったら？　あとは警備員でも立たせておけば」
　半ばやけになって千遥は言った。
「それがいいわ」
「そうしよう」
　二人が言い、千遥は呆れた。
　アパートを出ると、住宅街に白いノールスロイスという違和感がすごかった。
　その先端にある天使のマスコットが気になって、ソワソワした。
「あれ触ってみていいですか？」
　言ってみると、海恋はにやりと笑った。
「いいわよ」
　恐る恐る触ると、ピコっとマスコットが引っ込んだ。
　思わず海恋を見ると、海恋と海里がくすくすと笑った。
「昔それで遊んで運転手に怒られたのよ」
　海恋はそう言ってまたくすくすと笑った。

　結局、彼が古い２DKアパートを買い、翌週からは一緒に住んだ。
「なんでこんなことに」
　千遥は頭を抱える。
　四世帯が住めるアパートで、二階の二世帯に千遥と海恋、一階に海里、あと一室は二人のための家政婦が住む。それで満室になり、周囲は常にガードマンに見張られた。
　千遥の荷物はほとんどが彼によって捨てられた。あんまりだ、と千遥は怒った。
「なんで勝手に捨てるの！」
「あんな男の触ったものは全部いらない」
　彼はそう断言した。
　数日後、段ボールがたくさん届いた。中身は海里が捨てたはずの服や物だった。
　驚いていると、海里が彼女を訪ねてきた。
「特注で作り直した。これで俺からのプレゼントになった。好きなだけ使ってくれ」
　彼女を驚かせたのはそれだけではなかった。
　海里と海恋は毎日のように千遥の部屋にやってきた。
「なんでうちに」
「ご近所づきあいは大事だ。俺は大家だし」
「私の部屋、ベッドを入れたらいっぱいになっちゃったの」
　二人の勝手な言い分に、千遥はうんざりする。