財閥御曹司の独占的な深愛は 〜彼氏に捨てられて貯金をとられて借金まで押し付けられた夜、婚約者に逃げられて未練がましい財閥御曹司と一晩を過ごしたら結婚を申し込まれました〜
「そろそろ結婚の意思を固めてくれないかなあ」
海里は呟き、千遥は反論する。
「会ったばっかりなのに」
「見合いなんて数回会っただけで結婚を決めるんだぞ」
「私のこと好きなわけでもないのに」
「好きだ」
「元カノに似てるから好きになったように錯覚してるだけだわ」
「俺の好みが一貫しているだけだ。なんの矛盾もない」
「未練はどこへ行ったの?」
「細かいことは気にするな」
海恋はそのやりとりをにやにや笑って見ている。
「兄の元婚約者、二階堂茉優っていうんだけどね。私、本当はあの人嫌いだったの。千遥さんが結婚してくれたらいいなあ」
そうやって二人はいりびたり、千遥は文句を言いながらも彼らにお茶をいれた。
「店の名前を変える」
出勤後、朝のミーティングで海里はそう言った。
「新しい店名はMARINE SNOWだ」
マリンスノーは海中であたかも雪がふっているように見えることからそう呼ばれ、その正体はプランクトンの死体などだと言われている。
「そのタイミングでメニューを増やす。相模湾で採れた深海魚を売りにするんだ。通常メニューに加えて深海魚のバーガーや唐揚げなどだ。メヒカリやタカアシガニ、ダイオウグソクムシなどを使う。シェフの光池さんとはもう調整に入っている」
千遥は愕然とした。そんなこと、今まで海里から一言も聞いたことはなかった。
「深海、人気だもんねー」
「深海魚釣りってのもあるらしいよ」
バイトがこそこそと話し合う。
「店も改装する。その間の休業補償は行う。日程は未定だ。マリーナとしては海の駅としての登録申請をするから許可が出るまでに間に合わせる」
ざわざわと店員がざわめいた。
「改装なら時計買い直してもらえるかなあ」
「最近よくずれるもんね」
「店長、知ってました?」
「私も初めて聞いたわ」
しょせん雇われなのだ、とつきつけられた気がした。
毎日部屋に来て愛を囁くくせにそういうことを言ってくれない。
海里は呟き、千遥は反論する。
「会ったばっかりなのに」
「見合いなんて数回会っただけで結婚を決めるんだぞ」
「私のこと好きなわけでもないのに」
「好きだ」
「元カノに似てるから好きになったように錯覚してるだけだわ」
「俺の好みが一貫しているだけだ。なんの矛盾もない」
「未練はどこへ行ったの?」
「細かいことは気にするな」
海恋はそのやりとりをにやにや笑って見ている。
「兄の元婚約者、二階堂茉優っていうんだけどね。私、本当はあの人嫌いだったの。千遥さんが結婚してくれたらいいなあ」
そうやって二人はいりびたり、千遥は文句を言いながらも彼らにお茶をいれた。
「店の名前を変える」
出勤後、朝のミーティングで海里はそう言った。
「新しい店名はMARINE SNOWだ」
マリンスノーは海中であたかも雪がふっているように見えることからそう呼ばれ、その正体はプランクトンの死体などだと言われている。
「そのタイミングでメニューを増やす。相模湾で採れた深海魚を売りにするんだ。通常メニューに加えて深海魚のバーガーや唐揚げなどだ。メヒカリやタカアシガニ、ダイオウグソクムシなどを使う。シェフの光池さんとはもう調整に入っている」
千遥は愕然とした。そんなこと、今まで海里から一言も聞いたことはなかった。
「深海、人気だもんねー」
「深海魚釣りってのもあるらしいよ」
バイトがこそこそと話し合う。
「店も改装する。その間の休業補償は行う。日程は未定だ。マリーナとしては海の駅としての登録申請をするから許可が出るまでに間に合わせる」
ざわざわと店員がざわめいた。
「改装なら時計買い直してもらえるかなあ」
「最近よくずれるもんね」
「店長、知ってました?」
「私も初めて聞いたわ」
しょせん雇われなのだ、とつきつけられた気がした。
毎日部屋に来て愛を囁くくせにそういうことを言ってくれない。