財閥御曹司の独占的な深愛は 〜彼氏に捨てられて貯金をとられて借金まで押し付けられた夜、婚約者に逃げられて未練がましい財閥御曹司と一晩を過ごしたら結婚を申し込まれました〜
 レンタル彼女、と海恋が言っていたのを思い出す。
 あのときの話は流れたのかと思っていたが、きっと有効だったのだ。報酬は会社の買収。あれで助けられたのだ。海恋がうけ合った1億300万、破格だ。
 翌日からは店内に業者が来て一角で打ち合わせを始めた。
「本当に海里さんの店になったんだ」
 今更ながら実感が湧いてきて、千遥はため息をついた。

 海里と一緒に出勤して一緒に帰るのが日常になっていた。
 海恋は一週間で「飽きた」と言ってアパートを出た。
 その翌日、帰ると大きな荷物が通路に置かれていた。
「何これ」
 首をひねっていると、海里が階段をのぼってきた。
「届いたな」
「あなたの荷物?」
「まあまあ、まずは部屋に」
 海里に言われて部屋に入ると、彼はうきうきと荷物を持って入ってきた。
「なんで!?」
 千遥にかまわず開梱し、段ボールを片付け、本体を組み立てる。
 こたつだった。
「憧れだったんだよ! 人をだめにするという噂の暖房器具!」
「だからなんで私の部屋?」
「あなたと一緒に入りたかったから」
 こたつの電源を入れてスーツのまま入る。
「スーツがシワになるんじゃない?」
「そうか」
 スマホをとりだし、ぽちぽちする。
 ふと、千遥は気づいてしまった。
 海恋がいないので、今は海里と部屋に二人きりだ。
 急に胸がどきどきした。
 海里はまったく千遥を気にすることなくリラックスしてこたつに入ってテレビを見ている。
 スーツ姿で彼が畳の部屋でこたつにあたっているのは、とてもシュールだった。
「千遥さんも入りなよ」
「うん……」
 こたつに入ると、足があたってしまった。
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