財閥御曹司の独占的な深愛は 〜彼氏に捨てられて貯金をとられて借金まで押し付けられた夜、婚約者に逃げられて未練がましい財閥御曹司と一晩を過ごしたら結婚を申し込まれました〜
「一年もたつのに未練がましい。サッサと忘れなさいよって思いますよね」
 なんとも言えず、千遥は曖昧に微笑してごまかした。
「兄の元婚約者に似てるんです。顔はぜんぜん似てないんですけど、雰囲気とかそういうのが。初めての人で思い入れがすごいらしくて。しばらくつきあってもらえませんか」
 さらっとすごいことを言われた気がする。
「つきあうって……」
「恋人としてじゃなく、兄の暇つぶしと言うか世話係というかなんというか。報酬はお支払いします。レンタル彼女みたいな。もちろん大人の関係はなしで大丈夫です」
 報酬、という言葉に千遥は目がくらんだ。
「いくらくらい?」
「いくらでもいいわ」
「1億300万円でも?」
「いいですよ」
 あっさり答える彼女に、愕然とする。
 冗談を言っているようには見えなかった。
「お願い、助けると思って」
 彼女は両手を合わせて千遥を拝んだ。
 困っていると、ベッドで男性が身じろぎした。
「まゆ!」
 がばっと起きた直後、頭を抱えた。
「二日酔い? 飲みすぎよ」
「そう言うなって」
 頭を抱えたまま、彼は千遥を見た。
「まゆ……じゃないな。お前の友達か?」
「何言ってるのよ。お兄様が連れてきて、昨日は一緒に寝てくれたのよ」
「ちょ、言い方!」
「そうか、一緒に……」
 頭を抱えたまま、ぴんと立った寝癖のついた頭と気崩れたスーツ姿で彼は顔だけをきりっとさせた。
「同衾した責任をとる。結婚してくれ」
「はあ!?」
 名前も知らない男性にプロポーズされてしまった。
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