財閥御曹司の独占的な深愛は 〜彼氏に捨てられて貯金をとられて借金まで押し付けられた夜、婚約者に逃げられて未練がましい財閥御曹司と一晩を過ごしたら結婚を申し込まれました〜
「責任を感じなくても大丈夫ですよ」
 千遥はドン引きした。いったいこの兄妹はどういう精神構造をしているのだろう。
「俺、そんなに魅力ない?」
 しょんぼりとうなだれる。まるで叱られた犬だ。寝癖までしおれて見える。
「魅力とかいう話じゃなくて」
 うろたえて妹を見ると、彼女はまた千遥を拝んだ。
「魅力はあると思います」
「では結婚してくれ」
 どうしてそうなるんだ。
 千遥のほうが頭を抱えたくなった。
「あの……」
 そこへ新たな声が割って入った。
「失礼いたします。お食事のご用意は三人分でよろしいでしょうか」
「お願いね、千代さん。とにかくごはんにしましょう。えっと……あ、私、真道海恋(しんどうかれん)です。あの寝癖男が兄の海里(かいり)
「入鹿千遥です」
「イルカ!?」
 ああ、まただ、と千遥はうんざりする。
「入る鹿と書きます。海のイルカじゃないです」
「でも素敵。イルカさん、ちょっと失礼シマス」
 言って、海恋は千遥の胸を掴んだ。
「きゃあああ!」
 悲鳴に構わず、海恋は次に千遥のウエストをつかみ、腰回りをつかんだ。
「だいたいサイズはわかりました」
 千遥は自分を抱きしめるように腕を胸の前で合わせる。
「I’m Jealous」
 顔をしかめて海里が言った。
 ふふん、と海恋は笑う。
「私は女同士だから。お兄様はダメよ。黙って嫉妬してなさい」
 女同士でもセクハラだと思う。
 千遥は言えずに黙り込んだ。

 海恋が予備で持っていた新品の下着をくれてシャワーを貸してくれた。服は辞退した。
 さっぱりすると、いくらか気分は落ち着いてきた。
< 4 / 44 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop