財閥御曹司の独占的な深愛は 〜彼氏に捨てられて貯金をとられて借金まで押し付けられた夜、婚約者に逃げられて未練がましい財閥御曹司と一晩を過ごしたら結婚を申し込まれました〜
千遥はぺたん、と座り込んだ。
遠巻きに見ていたバイトたちは、彼女に声をかけることもできずに立ち尽くしていた。
気を取り直した千遥はバイトを指示して閉店作業をして、定時に彼ら彼女らを帰した。
店の金庫を探ると、書類が出てきた。
会社を千遥が買ったことになっていた。
「そんな」
千遥に似た字だった。が、微妙に違う。
慌てて裕太に電話をかけたが、通じない。
もしや、と美織にかけたが、こちらも通じない。
金庫をもう一度見ると手紙が入っていた。
裕太からだった。会社を買ってくれたことへの感謝と、円満な別れへのお礼、新恋人の美織と幸せになります、との宣言が書かれた手紙だった。
はっと気がついてネットバンクに接続する。
店のお金も千遥の貯金も数千円を残して引き出されていた。
「嘘……」
わなわなと全身が震えた。
どうしたらいいのか、まったくわからなかった。
店のバックヤードで座り込んでいた千遥だが、時計が12時を過ぎたところで、ようやくのろのろと立ち上がった。
明日は火曜で定休日だ。弁護士に予約をとって、相談に行こう。
店を出ると、潮を含んだ夜風が寒かった。
ハーバーに停められた船が波で揺れている。
千遥はよろよろと近づいた。
そして海里に抱きつかれた
悲鳴を上げた千遥だったが、彼のおかげで海に飛び込まずにすんだのだった。
***
「というわけなんです」
話し終わった頃にはすっかり食事が冷めていた。
「それで1億300万円だったのね。半端だと思った」
納得するように海恋が呟いた。
遠巻きに見ていたバイトたちは、彼女に声をかけることもできずに立ち尽くしていた。
気を取り直した千遥はバイトを指示して閉店作業をして、定時に彼ら彼女らを帰した。
店の金庫を探ると、書類が出てきた。
会社を千遥が買ったことになっていた。
「そんな」
千遥に似た字だった。が、微妙に違う。
慌てて裕太に電話をかけたが、通じない。
もしや、と美織にかけたが、こちらも通じない。
金庫をもう一度見ると手紙が入っていた。
裕太からだった。会社を買ってくれたことへの感謝と、円満な別れへのお礼、新恋人の美織と幸せになります、との宣言が書かれた手紙だった。
はっと気がついてネットバンクに接続する。
店のお金も千遥の貯金も数千円を残して引き出されていた。
「嘘……」
わなわなと全身が震えた。
どうしたらいいのか、まったくわからなかった。
店のバックヤードで座り込んでいた千遥だが、時計が12時を過ぎたところで、ようやくのろのろと立ち上がった。
明日は火曜で定休日だ。弁護士に予約をとって、相談に行こう。
店を出ると、潮を含んだ夜風が寒かった。
ハーバーに停められた船が波で揺れている。
千遥はよろよろと近づいた。
そして海里に抱きつかれた
悲鳴を上げた千遥だったが、彼のおかげで海に飛び込まずにすんだのだった。
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「というわけなんです」
話し終わった頃にはすっかり食事が冷めていた。
「それで1億300万円だったのね。半端だと思った」
納得するように海恋が呟いた。