ウソの魔法に、君とかかる (短)
パシッ
黒瀬くんが、私の手を握る。そして、強い眼差しで私を見た。
かと思えば、グンッと私を引き寄せ、そして、
ギュッ
女子グループと恭子ちゃんの前だというのに。堂々と、私を抱きしめてしまう。
「キャー!」
「やめなって黒瀬くん!」
女子グループが、悲鳴を上げた。そして恭子ちゃんも――
「なにやってんのよ、黒瀬くん! なんで、雫ちゃんを!」
「……なぁ、暮石」
「ちょっと、ムシしないで! 黒瀬くん!」
だけど、恭子ちゃんをスルーし続ける黒瀬くん。
私の名前を呼んだあと、さらに、ギュッと。強く抱きしめる。