ウソの魔法に、君とかかる (短)
「さっきまで泣いてたくせに」
「いたた、ふふ……うん、ごめんね」
握られる手に、力をこめられる。
その時、女の子の私には決して出せない力に、少しだけハッとした。
「男の子、なんだね……」
「なにが?」
「ううん、な……なんでもない」
今まで「花崎くん」しか「男の子」として見てなかったから……。なんだかビックリ。
そうか、黒瀬くんも……女子から人気の、カッコイイ男の子なんだ。
「ってか暮石、男を見る目なさすぎ」
「え……」
「暮石を見捨てるヤツのことなんて、さっさと忘れろよ」
「……っ」
ドクンと。心臓がイヤな音でうなる。
そうだ。
さっき私は、
花崎くんに、見捨てられたんだ。
――は、花崎く、
――ご、ごめん。その、気持ちは嬉しい……だけど、ごめん!
助けを求めて伸ばした手を、花崎くんは握ってくれなかった。
代わりに、いま隣にいる黒瀬くんが握ってくれている。