ウソの魔法に、君とかかる (短)

「確かに……花崎くんは、私を助けてくれなかったよ」


でも……


「だからって、嫌うことは出来ない……かな。いきなり告白した私が悪いし……。

あ、これが“好きになったら負け”って事なのかも」

「暮石……」



眉を下げて、私を見つめる黒瀬くん。

そんな彼を見て涙の止まった私は、ニコリと笑った。



「黒瀬くん、ありがとう。いま黒瀬くんが隣にいてくれるから、こうやって話が出来てる。なんだか……落ち着くの」

「もう泣かない?」

「うん……きっともう、大丈夫」

「……」



大丈夫――なんて。
本当はこれっぽっちも思ってない。


本当は、頭の中グルグルで……。


明日からイジメられるって思ったら、明日なんて来なければいいのにって。そんな事ばかり思う。



だけど、黒瀬くんには迷惑かけてばかりだから。

これ以上、私が泣いたり弱音をはいたら、もっと迷惑かけるだろうから。


だから、本当のことは言わない。
< 30 / 82 >

この作品をシェア

pagetop