ウソの魔法に、君とかかる (短)
「……」
「……」
な、なんか……気まずい。
なんでこんなに気まずいのか分からないけど、なんか気まずいっ。
なにか話題はないかな、と。
辺りをキョロキョロする。
すると――
「あ、オレンジの花……」
かわいらしい花が、目に入った。
「なんか丸っこいな。あの花」
「ふふ」
「丸っこい」と言った黒瀬くんが可愛くて、つい笑ってしまう。
すると黒瀬くんにジロリと見られたから、あわてて口を横へ引っ張った。
「こうなったら、あの花の名前を調べてやる」
「えぇ!?」
言うやいなや。黒瀬くんはスマホを取り出し、オレンジ色の花の画像を検索した。
「もうスマホ持ってるんだね、いいなぁ」
「めっちゃ制限されるけどな」
「それでも、うらやましいよ。私、次の誕生日までオアズケなの」
すると、黒瀬くんの指が止まる。
そして目をスマホへ向けたまま「誕生日いつ?」と、さりげなく私に聞いた。