ウソの魔法に、君とかかる (短)

「……」

「……」



な、なんか……気まずい。

なんでこんなに気まずいのか分からないけど、なんか気まずいっ。


なにか話題はないかな、と。
辺りをキョロキョロする。

すると――



「あ、オレンジの花……」



かわいらしい花が、目に入った。



「なんか丸っこいな。あの花」

「ふふ」



「丸っこい」と言った黒瀬くんが可愛くて、つい笑ってしまう。

すると黒瀬くんにジロリと見られたから、あわてて口を横へ引っ張った。



「こうなったら、あの花の名前を調べてやる」

「えぇ!?」



言うやいなや。黒瀬くんはスマホを取り出し、オレンジ色の花の画像を検索した。



「もうスマホ持ってるんだね、いいなぁ」

「めっちゃ制限されるけどな」

「それでも、うらやましいよ。私、次の誕生日までオアズケなの」



すると、黒瀬くんの指が止まる。

そして目をスマホへ向けたまま「誕生日いつ?」と、さりげなく私に聞いた。
< 33 / 82 >

この作品をシェア

pagetop