ウソの魔法に、君とかかる (短)
「こんなに可愛い花なのにね」
「見た目に騙されちゃいけないって事だな」
「……うん」
スマホの画面を暗くし、ポケットにおさめる黒瀬くん。
可愛い見た目の恭子ちゃんに騙された私は、なんだか泣きたい気持ちになって。
また、下を向いた。
その時だった。
「暮石もさ、毒もったら?」
「え?」
「あの花みたいに。持てよ、毒」
「……?」
ハテナが浮かぶ私の横を、五月の熱い風が通る。
すると花も私の髪も、一緒に揺れた。
「毒って、みんなにとって”悪いもの”だろ。
だから……なってやろーよ。ワルモノに」
「へ?」
「さっき笑って来たやつらを、見返してやりたいだろ?
日比谷たち、暮石が“やり返してこない”って思ってる。
だから暮石も……花みたいにさ。“可愛い見た目”とは反対に、やり返せばいいんだよ」
「!」
黒瀬くんの言葉に、ハッとする。
だけど一つ、言いたいことが……
「私、可愛いくないよ?」
「……」
「……?」
「はぁ~」