ウソの魔法に、君とかかる (短)

「彼氏彼女って言ったら、朝は一緒に行くものだと思って……ごめん。勝手に迎えに来た」

「えっ」



私の思っていることが伝わったのか、黒瀬くんが目をそらしながらポツリと言った。

なんだか照れてる……?



「それに暮石が、今日は行きたくないなーとか。そんな事を思ってるんじゃないかと思って、だな」

「黒瀬くん……」



すごい。黒瀬くん、十分前の私を、カンペキに把握してる。

まさに私、学校に行きたくないって、言いました……。



「けど、急にきたら迷惑だったよな。悪い、明日から気を付ける」



パッと向きを変えて、私より前を歩く黒瀬くん。

さっき二階から見た時に小さく見えた黒髪の頭が、今は私よりも高い所で、風に吹かれて揺れている。その揺れ方が、なんだかモジモジしているように見えて……。



「やっぱり黒瀬くん……照れてる?」

「はは。ずいぶん元気そうで安心したよ。なぁ?」

「じょ、冗談です……っ! からかってスミマセンでした」

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