ウソの魔法に、君とかかる (短)
ペコペコ謝ると、黒瀬くんは「ふん」と言ったものの。
なかなか歩かない。ばかりか、半歩後ろに下がって、私の隣に並ぶ。
極めつけは、「ん」と、私に伸ばされた右手。
「この手は……?」
「日比谷たちに”本当に付き合ってる”って思わせるには、まずは形からってな。
って事で、手をつなぐ」
「えぇ……!」
ザザッと後ろに下がった私を見て、黒瀬くんは「文句いわない」と、私の左手をにぎる。
手を繋いで、となり同士で歩く私たち――
こんなの、いくらフリとはいえ、ドキドキしちゃうって……っ。
「朝から刺激が強いっ……ん?」
一台の車が、私たちの横を通り過ぎる。
その時に、気づいた。
黒瀬くん、車道側を歩いてくれてる。
私は、歩道側。