ウソの魔法に、君とかかる (短)
「……黒瀬くん」
「ん?」
本当はね、お母さんに黒瀬くんの姿を見られて、ちょっと恥ずかしかったんだ。
だけど……朝から、黒瀬くんと一緒にいられて、すごく心強い。
一人だと、学校に行けなかったかもしれない。
だから――
「ありがとう、黒瀬くん」
「ふは。ありがとうって、なにに?」
「え、えと……ぜんぶ?」
「ずいぶんデカい感謝だな」
学校にちかづく度に、一歩。また一歩と、足が重くなっていく私を察してなのか。
黒瀬くんはジメジメした空気をはね飛ばすように、豪快に「ハハ!」と明るい声で笑った。
「暮石といると、飽きないな」
「そ、そうなの……?」
「ん。そう」
その時、キュッと。
繋いだ手に、力がこめられる。
見上げると、優しい目をした黒瀬くんと目が合った。
ドキッ
「……あれ、んん?」
「なに?」