ウソの魔法に、君とかかる (短)
「や、なんでも……ない、です」



黒瀬くんを見て、心臓が鳴ったような……気のせいのような。

自分の事なのに理解できない。

すると黒瀬くんが「着いたぞ」と、校門をくぐり、そして――


いよいよ、教室のドアを開けようとする。



「準備はいいか?」

「ちょ、待って……っ」



校門をくぐった時から。手を繋いでいるからか、色んな人に見られた。

その視線が、するどくて、痛くて……そして見られて、恥ずかしかった。



だけど、耐えるんだ。



だって、これから先。

この教室の中では、今までの比じゃないくらい注目されるはずだから。



「すう~、はぁ~」



繋いだ手を見る。
準備は、満タン。
ドキドキは最高潮に近い。
口から心臓が出るって、たぶん今のこと。


だけど、頭の中に浮かぶのは――


毒をもった、オレンジの花。

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