ウソの魔法に、君とかかる (短)
本当に好きな人
「ほらー! やっぱり付き合ってんじゃんー!」
「俺の勝ちー! 負けたヤツは何かおごって~」
「ってか二人、そんな仲だったんだねぇ」
「きゃー! おめでとう~!」
「……あ、ありがとう」
あれ?
ドアを開けた時から、私が思っていた光景はなかった。
そもそも、上履きも隠されてなかったし。
教室にも、私の机はちゃんとある。
中身も……無事。
あれ?
イジメられて……ない?
「く、黒瀬くん……」
「……」
チラリと黒瀬くんを見ると、黒瀬くんはいつもの顔になっていた。ちょっと怖めの顔。
さっきまでケラケラ笑ってたのに、切り替えが早い……。
だけど、「良かったな」も「心配しすぎだったな」も。
そんな風に言ってくれない黒瀬くんが、ちょっと気になるというか……。
黒瀬くん、私、喜んでいいんだよね?
イジメられてないって、そう思っていいんだよね?
そう思っていると、黒瀬くんはポツリと呟いた。