聖騎士さまに、愛のない婚姻を捧げられています!
ルーシーたちはニコニコと笑いながら近づいてくる。だがその目は鋭く、二人の身なりや装飾品を品定めしている。
リリシアたちは旅の支度のままだ。華美に着飾ってはいない。夫も、腰に聖騎士の剣を身につけてはいるが簡素な外衣を纏っているだけだった。
夫人は蔑んだ視線を二人に送り、挨拶がわりにかすかに頷くのみ。二人の姉妹はゆっくりと笑みを深めた。
「あのね、私たち今夜は公爵夫人の夜会に招待されてるの」
「今度のはすごいのよ。特に大きいの。名のあるおうちは皆来るんじゃない?ご夫人はこぞっておしゃれしているから、負けてられないのよ。ね、お母様」
「……ええ、そうね。かわいい娘たち。貴女たちもそろそろ本気で殿方を選ばなければならないわ」
数ヶ月ぶりに会った身内に、新婚の暮らしはどうかとか、馴染めたかとか、そんな質問は一切せず彼女たちは自慢げに近況を語る。
「ああ、そういえばあなたは?あなたのところにも招待状来てるでしよ?」
社交の場に出ないことで有名なデインハルト家ではあるが名家なことに違いない。だが、リリシアはそういったことは知らされていなかった。
「一ヶ月も前に来てたはずよ。知らないの?」
「ええ……」
隣で黙って彼女たちを見守っていたセヴィリスを窺う。彼は穏やかに首を横に振った。
「当家では、王都からの大抵のお誘いは断っているのです」
「まぁ」
「あら」