聖騎士さまに、愛のない婚姻を捧げられています!
二人はくすくす笑った。
「それは残念。貴女もせっかくいろんな宴に出られるようになるかと思っていたのに、ねえ?」
「そうそう、いつも途中で帰っちゃうから」
思わずリリシアは口を開いた。
「わ、私は素敵なお茶会をしていただきました。デインハルト家は、素晴らしい場所です」
「……ふうん?そうなの?」
二人は片眉を上げ疑わしげな様子でリリシアを見る。「妖精あたま」だと決めてかかっているセヴィリスをまるで彼がこの場にいないかの如くの振る舞っている。
リリシアのなかで、なにかがぷちりと切れた。
「私には、そのようなことより大切なお役目がありますから」
「そのようなこと?……って、高位の方に招かれる舞踏会や観劇会より大切なことっていう意味?あなた、変なこと言うのね。あんなに楽しいことないじゃない」
姉妹は揃って首を傾げた。どうやら、心底そう思っているらしかった。リリシアの脳裏に、辛い過去を持ちながらも明るく生きるデインハルトの人々や、今にも住処を失いそうな子供たちがよぎる。
こんなに底の浅い彼女たちの、何をいったい怖がっていたのだろう。リリシアの中に長年巣食っていた恐怖心がひゅるひゅると萎んでいく。
「セヴィリス様……旦那様は人々を護るという大切なお仕事をしておりますので、私は、この方を支えることが役目なのです。これからずっと、ずっと、そうするつもりですわ」