聖騎士さまに、愛のない婚姻を捧げられています!

「そうだよね。そこは、私もよくわからないんだ。ただ間違いなく、グリンデル領に来てから魔印の力は弱まったと思っている。聖騎士領にいるという以上の力が働いているんだと思うよ」

 それにはお父上からの贈り物が関係しているはずだ、とセヴィリスは考えながら答えた。

「リリシア殿、父上のご出身は?」

 彼はテキパキとした聖騎士の口調で彼女に尋ねた。

「両親が出会ったのはルーデン地方、とだけ。その頃はベルリーニ家の別邸があったそうです」
「ルーデンか……かなり遠いね。グリンデルからだと、王国の端と端になってしまうな」
「父が育った孤児院も、その辺りだとは思うのですがあまり詳しくなくて……ごめんなさい」
 
彼女は項垂れた。

「貴女が謝ることはないよ。あちらは私たち聖騎士の活動範囲とは違うけれど、調べればなにかわかるかもしれない」
「調べる……?父のことを」
「お父上のこともだけれど、その石についても気になるから、できればルーデンに行きたいと思っている」

 聖騎士は魔獣に関わることであれば王国のいずれの地も調査できる。リリシアは彼の腕を掴んだ。

「わ、私もっ! 私も行きたいです。ルーデンに、父様のこと、すこしでも知りたいの」
「リリシア……でも、ルーデンはとても遠い。今回以上の長旅だし、聖騎士団として向かうのだから、女性の貴女を同行するのは……魔印もあるし」
「セヴィリス様……お願いいたします。けして、邪魔になったりしませんから」

 彼女は目を潤ませ嘆願した。今までずっと行ってみたかったのだ。

「貴女を邪魔だと思うはずなどないよ……わかった、皆に言ってみよう。この石の力が魔物に対抗できるのなら、我らの役に立つに違いないからね」
「ありがとうございます……っ」

 リリシアは夫の首にがばりと手を回し、形の良い唇に何度も口づけをした。彼は驚いたように目を瞬かせ、妻の腰を抱き寄せる。

 雨が止み、夜明けの光が差し込み始めた部屋で、二人は何度もなんども唇を重ねた。

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