聖騎士さまに、愛のない婚姻を捧げられています!
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そこからは怒涛の時間で、馬車に乗り込んでからのリリシアはほとんどなにが起きているかわからないまま聖堂についてしまった。
終始白の分厚いヴェールをかぶっていたので周りの状況がよくわからなかったのもあって、婚礼式はあっという間にはじまり、そして終わってしまった。
かろうじてリリシアが顔を上げられたのは聖堂での新郎新婦の誓いの儀式だった。
花嫁の純潔の象徴である真っ白な布を外されるときに、リリシアは新郎の指がかすかに震えているのを見たのだ。
それは、彼女にとってなんだかとてつもなく神聖なことに思えた。
(私は、本当にいまから、この方の妻になるのね)
ぎゅっと胸が熱くなる。叶うならば、父と母のように仲良くなりたい。リリシアは聖堂に飾られている女神像へ心を込めて祈った。
(どうかこの方をお支えできるよう、お力をお貸しくださいませ)
ベルリーニ伯爵夫妻は式が終わると宴の誘いも断りそそくさと馬車に乗り込み家路についてしまった。
「我らは森の道に慣れておりませんのでな。お誘いはありがたいがこのまま帰らせていただく」
一族のお荷物であるリリシアと別れを告げた彼らの晴れやかな態度といったら! 寂しさの一欠片も見せないその姿はかえって清々しいくらいだった。
こうして本当に一人になったリリシアは、新郎と一緒に聖堂から屋敷へと数刻かけて向かうことになった。