聖騎士さまに、愛のない婚姻を捧げられています!
彼らは大きく頷き、そうして深々と礼をする。
「我らにお任せを。セヴィリス様。さぁ、宴でございます!皆さまお待ちかねですのでお早くご挨拶を、さぁさぁ!君達は奥様を……! デインハルト家に相応しいお姿に」
嬉しげな執事や従僕たちに一気に囲まれてしまい、セヴィリスは背中を押されるようにして奥へと行ってしまう。
「では、また後でね」
躊躇いがちにリリシアにそう告げ、夫の姿が見えなくなってしまった。
「え、あの……」
何かを尋ねる間も無く、今度は女性たちがリリシアを取り囲む。
「さあ、奥様。奥様はこちらでございますよ! まずは新しいお部屋へご案内いたしますから」
彼女は侍女に促され、新しい部屋へと連れていかれた。
案内されたのは中央に大きな天蓋付きの寝台があり、ふかふかとした絨毯が足に心地良い部屋だった。上質の木を使った調度品が控えめに並ぶ。どちらかというと飾りは少ない、地味な部屋だ。
「お部屋は奥様のお好きに飾れるようにと、装飾品はごく控えめにしております。これから、なんでもお好きなものを言いつけてくださいませ」
館の正門で嬉しげに夫妻を迎えてくれた初老の紳士が、部屋の入り口で頭を下げ彼女を待っていた。
「私は家令のアンドルと申します。どうぞ、よろしくお願いいたします」
「こ、こちらこそ……」
「さあ、とりあえずお花を飾りましょう。今夜はとてもめでたい日です。とびっきりの宴をご用意いたしておりますよ」
「私たち、花嫁のお支度をお手伝いしたくてたまりませんでしたの!」