聖騎士さまに、愛のない婚姻を捧げられています!

 侍女頭が嬉しそうに笑いかけ、リリシアの頭に手を加える。

そうして彼女の栗色の髪はいくつも編み込まれ、緩く結い上げられた。その隙間に先ほど貰った花を優雅に差し込まれたリリシアはさながら花の聖女のようだった。

彼女たちはリリシアの顔色が悪いことには一言も触れなかった。

「さあ、これで相応しい装いになりましたわ」
「私どものご主人になんてぴったりな、たおやかで可憐な奥様でしょう。ね、みんな」

 侍女たちは真面目な顔で頷く。そんなことは言われたことがないリリシアは頬を赤くして小さくなるばかりだ。

 そのあとからは領民の代表や神官などグリンデル領の人々を迎えての宴に継ぐ宴で、リリシアはカチコチと固まったまま、大広間の椅子に座り続けた。

(な、なんだか想像していたのと全然違う……みなさん、明るくて、嬉しそうで)

 セヴィリスの座る席にはたくさんの人物が入れ替わり立ち替わり祝いを述べにきていた。皆、一様にセヴィリスに敬意を示している。

(領主様として愛されている方なのね……ベルリーニ家の宴とは全然違うわ)

 ベルリーニ家を訪ねる人々は伯爵や夫人の機嫌を損ねないよう精いっぱい気を遣って振る舞っていた。粗相すれば瞬く間に令嬢たちの口から外へ広がってしまう。いつもどこか緊張した雰囲気が漂っていたのだ。

 今この場で笑顔を交えながら丁寧に受け答えするセヴィリスには、ベルリーニ家の姉妹が『妖精あたま』と揶揄していたような頭がおかしい様子は全く見えない。
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