聖騎士さまに、愛のない婚姻を捧げられています!

「これで楽になるはずだから、匂いはちょっとアレだけど我慢してほしい」

 セヴィリスは真剣な瞳で彼女の手当てをしている。リリシアは彼にされるがままになりながら、頭のなかでは疑問がぐるぐると回っていた。

(こ、こんなの、申し訳なさすぎるわ、初夜だというのに旦那さまにこんなことを……)

 そう思うといてもたってもいられなくなり思わず彼の手を解く。セヴィリスが驚いて顔をあげた。

「ご、ごめん、痛かったかな」

 リリシアは深く頭を下げた。自分は初夜になんという失態を犯してしまったのか。

「も、申し訳ありません!このようなこと、お手を煩わせてしまって! あの、肩は本当に大丈夫ですから、その……」

 早く花嫁の義務を果たさなければならない。でなければ失望され、この家で居場所をなくしてしまうかもしれない。リリシアは自分で寝衣の胸のリボンを解き始めた。

「は、はやく、はじめましょうっ」

 けれども震える指は上手く動いてくれない。

(ち、ちゃんと、脱がなくちゃ……)

「だ、だめだよ。そんなことしたら……」

 きゅ、と彼の手がリリシアの指を握った。
「え?」

 セヴィリスは美しい顔に焦りを浮かべてリリシアの動きを止めた。
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