聖騎士さまに、愛のない婚姻を捧げられています!

 長く大きな食卓でリリシアと二人で腰かけ、食事をとる。優雅な手つきで食事を口に運ぶその姿は、魔の物を屠るという豪胆な騎士にはやはり見えない。

(本当にこの方は何度もあんな獣と戦ってらっしゃるのかしら……)

 美しい横顔の輪郭と、あの時の獰猛な姿が重ならなくて、リリシアはいけないとおもいつつ、つい彼を見てしまう。

(いけない。あまり見ては……失礼だわ)

 夫にはたくさん聞きたいことがある。聖騎士の役目とはどのようなことなのか。この館の離れにかなり大きな建物があるがあれはなんなのか、とか他にもたくさん。

 だが、リリシアが口を開こうとするたびに頭の中で警鐘が鳴り響くのだ。

『口を開くな、リリシア』

 ベルリーニ家の食事では、巨大な長卓を家人が囲んでいた。だが賑やかな会話が弾むなか、リリシアは一人、長い食卓のほぼ角に座らされていた。

彼らの会話の内容までは届かない、離れた席。どんなに人数が少なくとも彼女の席が夫人や娘たちと近くなることはなかった。

少女の頃は話に加わろうと身を乗り出したりもしたが、その度に冷たい視線を投げられてきた。だから、俯いて食べるのが習慣になってしまっていたくらいだ。
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