聖騎士さまに、愛のない婚姻を捧げられています!
「はは、すまないね。詮索好きと思われてしまうな。可愛い甥っ子のことが心配な叔父だと笑ってくれていい」ダリウスは苦笑して続けた。
「セヴィリスは討伐がない時はあそこで仕事をしているよ。だが、四六時中いるわけではない。彼にはちょっと変わった趣味があってね……」
ダリウスはそこで片目を瞑った。
「ま、それはおいおいあいつに教えてもらうといい」
「は、はい、いろいろ教えていただきありがとうございます」
「いや、私としても甥の奥方と話ができてとても良い時間だった。これこそ束の間の癒しだ。……ああそうだ。ところで、私からも尋ねていいかな?」
ダリウスはふと思いついたようにリリシアを見た。
「なんなりと、ダリウス卿」
「貴女の魔印のことなんだが……。かなり進行が遅いと聞いた。これはとても珍しいことでね。魔印は日々濃く、強くなるのが普通だ」
そういえば、セヴィリスも魔印がおとなしいのは珍しいと言っていた。
「……そ、そうなのですか。セヴィリス様が手当てをとても良くしていただいているので……」
「ふむ。それもあるだろうが。ましてや、あの憎き魔獣、ラギドなのだろう? あれは相当魔障も強い。だからこそ、聖騎士団も貴女をこうして保護したのだが……」
ダリウスはずいっと身を乗り出した。
「私も聖騎士の端くれだ。よろしければ、かの魔物のつけた痕を見せては頂けないだろうか?奥方殿」
「それは……ええ、もちろん」
副聖騎士長の提案にリリシアは素直に頷く。だが、ここは外だし、彼女の魔印は肩にある。少し恥ずかしくなって「あの、でも、ここでは……」と口ごもる。
ダリウスは「なに大丈夫、少し見せてもらうだけだから」とそっと手を伸ばしてきた。
「叔父上。その辺でいいでしょう。妻が困っております」
背後から鋭い声が飛んできた。
リリシアははっと振り返る。
「セヴィリス様?」
二人の後ろに、セヴィリスが険しい顔をして立っていた。