聖騎士さまに、愛のない婚姻を捧げられています!
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会いに行かなければ。
リリシアは馬車の中で一人座り、じっと前を見つめていた。
婚礼式以来会っていないし、なんの音沙汰もない養い家族。でも、修道院のこんな状況を放っておくなどできない。取り壊しを思いとどまってもらうようお願いしなければ。
リリシアはぎゅっと目を閉じた。
セヴィリスに迷惑はかけられない。きっと養父は居丈高に振る舞うだろう。夫を不快な気分にさせたくなかった。
それに、ルーシーとセーラ。そして、夫人。彼女たちに会ってしまったら。
正直、まだ怖いのだ。
(会うのなんて、平気だって思っていたけれど……。むしろ、一度ベルリーニを出てしまっただけに余計に怖くなるなんて)
グリンデルの皆が恋しい。あの、優しさに溢れた館に戻りたい。
でも、いま彼女は頼れるものはない。一人で立ち向かうと、決めたのだ。
「わたしに、勇気を貸して。父様……母様……」
リリシアは祈るようにペンダントを握った。