毒舌オオカミ秘書は赤ずきんちゃんを口説きたい
 軽くウィンクされ、ポカンとしてしまう。

「祖母の遺言でもあり、女性に優しくするよう心掛けています。時計は残念ですが、貴女を慰めるようにと祖母が報せたのかもしれません」

 葛城結人という名前からは気付けなかったものの、マカロンより甘い言葉を滑らかに操る顔立ちは日本人離れしていて。よく見れば彼の瞳は青味がかっていた。

「祖母がイタリア人なんですよ。日本へは結婚式に参列する為、やって来ました。貴女は峯岸斗真をご存知ですか?」

 私の視線で疑問を察してか、小気味よく応える。

「は、はい、テレビで観ました。初恋の人と結婚するとか? シンデレラストーリーって紹介されてました」

「シンデレラストーリー? はは、確かにそうですね。彼は長い間、一人の女性を想い続けてきましたから」

 峯岸斗真とは『ヒロインシューズ』の上層部であったはず。
 彼の結婚は芸能ニュースのように扱われ、日本でも注目度が高い。かくいう私も初恋を実らせたシンデレラストーリーを羨ましがる一人である。
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