毒舌オオカミ秘書は赤ずきんちゃんを口説きたい
「もしもし、遥? 朝早くからごめん」

 電話に応じたのは早起きと同じで、習慣みたいなもの。手酷く振った女に今更何の用があるのかと切り返す事が出来ず、小声で「別に」と言うのが精一杯。

「いやさ、遥がまさか会社を辞めるなんて思ってなくて。同僚としてはこれまで通りやっていこうと考えてたから。今、課長から退職したって聞いて驚いちゃったよ」

 全然悪びれていない顔が浮かび、悔しさより悲しみが勝る。この人は私の上司とも付き合っておきながら何て言い草だ。それに課長も課長じゃないか。私が職場に居づらくなった理由を課長が一番分かっているはずなのに。

「……それで用件は? 私、これから出掛けなきゃいけないの」

「お、さっそく就活とか? 遥はまだ若い。結婚の予定がないと言えば就職先はすぐ決まるよ。そうそう、遥かの部屋にある俺の荷物だけど送ってくれないかな?」
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