二人の歩幅が揃うまで
* * *
(えーん!誰ですかー飲み会をこの日に設定したの!)
7月17日の金曜日。絶対に定時で上がって、一度帰宅してプレゼントを持ってお店に行こうと思っていた綾乃の計画はとっくの昔に破綻していた。突然持ち出された飲み会。残っているみんなで行こうとなれば、新人の綾乃には断るチャンスがなかった。
腕時計は無情にも9時半を差していた。これは絶対に間に合わない。ここからでは1時間以上かかってしまう。
マップのアプリを開いて、そこから電話番号を検索した。夜になっても湿度と熱気が減らないため、じんわりと汗をかいた手で通話ボタンをタップした。
「こんばんは。スクイズィート、咲州が…。」
この声は間違いない。
「健人くん?」
「…綾乃さん、ですか?」
戸惑った声が返ってくる。電話なんて確かに一度もしたことがない。
「お、お誕生日、おめでとうって…直接…言いにいくつもりが…。」
「えっとあの、今外ですか?」
「そうなの!ごめんね、聞き取りにくくて!多分営業時間内に行くのが無理そうだから、せめておめでとうだけでもと思って…。」
最初に出てくれたのが健人でよかったと心底思う。別のバイトの子だったら、色々と説明をしなくてはならなくなり、それこそ厄介だった。
「…ありがとうございます。嬉しいです、すごく。」
「本当はお店にもっと早い時間に行くつもりだったのに…悔しい…。」
息が上がる。いつもはもっと敬語で話しているのに、余裕がないせいで口から滑り落ちるのは普段の言葉遣いだった。
(えーん!誰ですかー飲み会をこの日に設定したの!)
7月17日の金曜日。絶対に定時で上がって、一度帰宅してプレゼントを持ってお店に行こうと思っていた綾乃の計画はとっくの昔に破綻していた。突然持ち出された飲み会。残っているみんなで行こうとなれば、新人の綾乃には断るチャンスがなかった。
腕時計は無情にも9時半を差していた。これは絶対に間に合わない。ここからでは1時間以上かかってしまう。
マップのアプリを開いて、そこから電話番号を検索した。夜になっても湿度と熱気が減らないため、じんわりと汗をかいた手で通話ボタンをタップした。
「こんばんは。スクイズィート、咲州が…。」
この声は間違いない。
「健人くん?」
「…綾乃さん、ですか?」
戸惑った声が返ってくる。電話なんて確かに一度もしたことがない。
「お、お誕生日、おめでとうって…直接…言いにいくつもりが…。」
「えっとあの、今外ですか?」
「そうなの!ごめんね、聞き取りにくくて!多分営業時間内に行くのが無理そうだから、せめておめでとうだけでもと思って…。」
最初に出てくれたのが健人でよかったと心底思う。別のバイトの子だったら、色々と説明をしなくてはならなくなり、それこそ厄介だった。
「…ありがとうございます。嬉しいです、すごく。」
「本当はお店にもっと早い時間に行くつもりだったのに…悔しい…。」
息が上がる。いつもはもっと敬語で話しているのに、余裕がないせいで口から滑り落ちるのは普段の言葉遣いだった。