二人の歩幅が揃うまで
* * *
カーテンを開けていてよかった。この朝の光がなければ起きれなかったかもしれない。睡眠は明らかに足りていないし、主に下半身がややだるいし、仕事をするコンディションとしては最悪に近いが、隣ですやすやと眠る人は、これ以上ないくらいに穏やかな顔で眠っている。
「ん…。」
「あ、起きた?おはよ。」
「…おはよ…綾乃ちゃん。」
完全に覚醒していない顔だが、綾乃を抱きしめる腕だけは起きているようだ。ぎゅっと抱きしめ、綾乃の肩に顔を埋め、健人は大きく息を吸い込んだ。
「…綾乃ちゃんのいい匂いがする。」
綾乃は健人の背中を軽く叩きつつ、起床時のこの深呼吸を受け入れていた。
「あの…私昨日、どこかで意識、途切れた?」
「記憶、ない?」
「なくはないんだけど、その…結構恥ずかしいって気持ちが増しちゃって…ところどころ飛んでるかもって、記憶が。」
「…綾乃ちゃん、ずっと可愛かったから、…なかなか離してあげられなくてごめんね。お仕事、行ける?」
「うん。…さすがに頑張るよ、今日は。いつもよりしっかり食べてから行く。」
「無理させちゃったね。」
夜はあんなに『男』だったのに、今綾乃の顔を覗き込む顔は『男の子』で、綾乃はくすっと笑った。
「綾乃ちゃん?」
「はぁー…もう、敵わない。」
「え?」
「こうやってすぐ可愛い顔するんだもん。可愛いなぁーもう。」
「わっ!」
健人の髪をぐしゃぐしゃと撫でる。綾乃のなすがままになっている健人もいつの間にか笑っている。
「綾乃ちゃん~。」
「なにー?」
「これからもずっと、こうやっていっぱい構って。」
「え?」
「仕事が忙しいときとか、ちゃんと我慢もできるから、ほんとは!…昨日は、ちょっと我慢できなかったけど。」
突然の小声にクスリと笑ってしまった。我慢できなかった自覚はちゃんとあったらしい。
「一回にいっぱいじゃなくて、長くちょっとずつ、ずっとがいい。」
「私が構うんだね、健人が私に構うんじゃなくて。」
「うん。俺が綾乃ちゃんに構ってもらうの。こうやって頭撫でてもらえるのも気持ちよくて大好きだし、昨日いっぱいキスしてくれたのも、ぎゅってしてくれたのも全部好き。」
「ぎゅーは私の方からしたかもだけど、キスって私からした?」
「受け入れてくれたってのが嬉しいんだよ。」
「そっか。まぁでも、拒まないけどね、そもそも。」
「え?」
「だって、あれだけ大事にされたら拒めないよ。…いっぱい大事にしてくれて、ありがとね。」
綾乃の方から健人の唇に軽く自分のものを重ねた。
カーテンを開けていてよかった。この朝の光がなければ起きれなかったかもしれない。睡眠は明らかに足りていないし、主に下半身がややだるいし、仕事をするコンディションとしては最悪に近いが、隣ですやすやと眠る人は、これ以上ないくらいに穏やかな顔で眠っている。
「ん…。」
「あ、起きた?おはよ。」
「…おはよ…綾乃ちゃん。」
完全に覚醒していない顔だが、綾乃を抱きしめる腕だけは起きているようだ。ぎゅっと抱きしめ、綾乃の肩に顔を埋め、健人は大きく息を吸い込んだ。
「…綾乃ちゃんのいい匂いがする。」
綾乃は健人の背中を軽く叩きつつ、起床時のこの深呼吸を受け入れていた。
「あの…私昨日、どこかで意識、途切れた?」
「記憶、ない?」
「なくはないんだけど、その…結構恥ずかしいって気持ちが増しちゃって…ところどころ飛んでるかもって、記憶が。」
「…綾乃ちゃん、ずっと可愛かったから、…なかなか離してあげられなくてごめんね。お仕事、行ける?」
「うん。…さすがに頑張るよ、今日は。いつもよりしっかり食べてから行く。」
「無理させちゃったね。」
夜はあんなに『男』だったのに、今綾乃の顔を覗き込む顔は『男の子』で、綾乃はくすっと笑った。
「綾乃ちゃん?」
「はぁー…もう、敵わない。」
「え?」
「こうやってすぐ可愛い顔するんだもん。可愛いなぁーもう。」
「わっ!」
健人の髪をぐしゃぐしゃと撫でる。綾乃のなすがままになっている健人もいつの間にか笑っている。
「綾乃ちゃん~。」
「なにー?」
「これからもずっと、こうやっていっぱい構って。」
「え?」
「仕事が忙しいときとか、ちゃんと我慢もできるから、ほんとは!…昨日は、ちょっと我慢できなかったけど。」
突然の小声にクスリと笑ってしまった。我慢できなかった自覚はちゃんとあったらしい。
「一回にいっぱいじゃなくて、長くちょっとずつ、ずっとがいい。」
「私が構うんだね、健人が私に構うんじゃなくて。」
「うん。俺が綾乃ちゃんに構ってもらうの。こうやって頭撫でてもらえるのも気持ちよくて大好きだし、昨日いっぱいキスしてくれたのも、ぎゅってしてくれたのも全部好き。」
「ぎゅーは私の方からしたかもだけど、キスって私からした?」
「受け入れてくれたってのが嬉しいんだよ。」
「そっか。まぁでも、拒まないけどね、そもそも。」
「え?」
「だって、あれだけ大事にされたら拒めないよ。…いっぱい大事にしてくれて、ありがとね。」
綾乃の方から健人の唇に軽く自分のものを重ねた。